日本に数多くある信仰の山のなかで、白山を特徴づけるものとして、加賀・美濃・越前の三方から延びる禅定道と呼ばれる道の存在が挙げられると、ぼくは思っています。
白山比咩(しらやまひめ)神社に伝わる古文書には、天長9(832)年に三方の馬場(ばんば)が開かれ、そこから御山に参詣すると書かれています。
馬場というのは、信仰・登拝の拠点のことで、加賀馬場はいまの白山比咩神社にあたります。
昔は、そこから手取川に沿って遡り、中宮・尾添(おぞ)を経て、一里野高原の先にあるハライ谷から白山山頂に達していました。山道の部分は廃道になっていましたが、1987年に復元され、現在、白山登山道の一つとして利用されています。
途中には、昔の行場(ぎょうば)であった檜新宮(ひのしんぐう)跡や宿泊施設であった室(むろ)跡の石垣などを見ることができます。
室堂からハライ谷の登山口まで18㎞もあり、下りに取っても1日ではなかなかたいへんな健脚向きのコースですが、遺跡や高山植物など見どころも多く、千二百年に及ぶ信仰の歴史と往時をしのびながら歩く禅定道は、白山ならではの山道といえるでしょう。(文:のんべぇ)